株式会社木原製作所様は、乾燥機器メーカーです。国内だけでなく、海外にも事業を展開されています。同業他社にはない強みや、社内で力を入れている“人材育成”、今後の展望などを話していただきました。

取材に加えて、ショールームや工場も案内していただき、乾燥業界の奥深さを垣間見ることができました。
専務取締役 木原利昌(きはらとしまさ)様

御社の事業内容について教えてください。

当社は乾燥機器メーカーです。もともとは、たばこの乾燥機器から事業がスタートしました。乾燥機器は大きさが様々で、用途によっても違います。一般的には、乾燥しているものというと乾き物やドライフルーツを思い浮かべると思います。しかし、当社の乾燥機はこのような食品市場だけではなく、“出雲大社のしめ縄”や“徳地の和紙”といった食べ物以外の製品にも使用されています。2017年からは本格的な海外展開を開始し、現在はタイやロシアを中心に乾燥機器を輸出するという取り組みを行っています。

乾燥機器メーカーは全国的に珍しいのでしょうか?

同じような機械を作っている会社は全国に数社あります。

同業他社と比較した際の御社の特徴を教えてください。

2点あります。1点目は、技術としての“乾燥方法”の違いです。当社の乾燥方法の大きな特長は、“湿度”管理を重視しているという点です。一般的な温風乾燥機は熱と風だけで乾燥させるのですが、当社はそこに“湿度“の管理を加えることで、色のきれいな、より付加価値の高い商品を作ることを可能としています。

例えば、ドライフルーツだと茶色っぽくなっているものを見かけるのではないかと思いますが、当社の乾燥機を用いて乾燥させたドライフルーツは、生の果物に近い鮮やかな色と香りを残すことができます。この当社独自の技術は「DDS(Dual Drying System)」という名称で複数の商標登録をしており、他のメーカーとは異なる当社の大きな技術的特徴になっています。国連が推進するSDGsに対する貢献が期待される技術として、国連工業開発機関(UNIDO)東京事務所の「STePP」にも登録されています。

2点目は、ただ機械を作って販売するだけでなく、地域振興のための乾燥商品開発支援を行っているという点です。行政・教育機関等に対しても商品開発の提案やアドバイスを行っています。「技術を地域振興に役立てる」という企業理念の下、社会的な利益も最大限考えながら活動しています。機械メーカーとしては全国的に見ても珍しい活動をしていますね。このような取り組みが高い評価を受け、農林水産省「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」、経済産業省「地域未来牽引企業」に選定されています。

全国から御社に依頼がくるのはなぜだとお考えですか?

乾燥に関する豊富な経験を蓄積してきたことに加え、「木原製作所なら前例のない機器開発でもやるんじゃないか」という市場の評価を得られるようになってきているからだと思います。私たちは、「やったことがないからやらない・できない」という考え方ではなく、「やったことがない案件だからこそ、挑戦してやり遂げる」というスタンスで事業に取り組んでいます。

前例のない製品開発と困難は一体のものです。ここで大切なのは、正解がない案件に対し、どのように向き合うかということです。当社では、このような案件を担当する営業マンや開発部員がたとえ何か失敗してしまったとしても、個人的な責任を追及するようなことは絶対にしません。チームとして失敗を即リカバーし、諦めずに最後までやり遂げることを支援する体制と社風が当社にはあります。

御社に求める人物像を教えてください。

一番は、真面目で誠実であることです。具体的に言うと、ミスをしたときに誤魔化すのではなく、ミスを認めて申告することができる人や、知らないことを知らないと素直に言える人を求めています。当社は能力や経験以上に、人や仕事に対して真面目で誠実に向き合えそうな人か、コツコツと地道な努力が続けられそうな人かという、基本的な性格を重視するようにしています。能力や経験は時間がかかったとしても後からいくらでも伸ばすことができますが、土台として大切な基本的性格を変えることは難しいと考えているからです。

新卒採用は積極的にされていますか?

今年は機械設計や電気設計を担える工学部の学生を対象として、開発部員の募集をしています。

新卒で入社した場合、どのようなステップで実務に入りますか?

どの部署でも、最低一年はOJT研修や資格取得をしてもらいます。二年目からは、その人の特性に合った仕事を先輩について学んでもらいます。資格について、取得にかかる費用は会社が負担して、積極的に取得してもらうようにしています。

資格について、法定上必要ではないものも取得してもらうようにしているとのことですが、教育に力を入れられているのは何故ですか?

法定上必要、というのは最低限の義務です。義務以外のことはコストになるから行わない、という姿勢では社員の能力は伸びません。企業は人で成り立っていますから、このような姿勢では企業としての能力も“最低限“がベースで頭打ちになってしまいます。つまり、全社的な能力を向上させていこうと思えば、義務の範囲を超えた教育に企業としてどれだけ投資していく意欲があるのか、ということにかかってくるのだろうと思います。

豊かな知識・技能・経験を備えた社員こそが企業競争力の源泉です。教育には相当の費用と長い時間がかかりますが、これからも継続して社員教育には力を入れていきます。社員の自信にもなりますし、対外的な信用にもなります。

御社に入社して、成長するのはどんな力ですか?

日本全国だけでなく、海外でも仕事ができる力です。この点は、山口県内でも特異性があると思います。実は、当社の県内での売上高は例年1%ないくらいです。ということは、良くも悪くも県外に出ていかないと売上が立たないということであって、外の世界をどんどん見てみたい!という好奇心旺盛な人にはうってつけの会社だと思います。世界は広く、面白い人や文化で溢れています。仕事をしながら各地で見聞を広められることが、当社の仕事の醍醐味であると思います。

現在、どのような人が働かれていますか?バックグラウンドなどを教えてください。

バックグラウンドは様々です。中途採用社員も多いため、前職がジャズピアニスト、プロボクサー、自衛隊員、ホテルマン、美容師、家電量販店員、団体職員、銀行員から留学経験者と、多様な経歴を持った人たちがいます。設計開発を担う開発部は、工学的なバックグラウンドを持った社員のみで構成されています。人柄が良くて真面目な方であれば、当社の仕事は必ずできるようになります。教育制度は整えてありますので、この点ご安心ください。

仕事のやりがいについて教えてください。

私は専務という立場なので、最も大きな仕事のやりがいは“木原製作所”という会社そのものを作れることです。木原製作所は乾燥機器メーカーですが、様々な製品開発の企画を考え、その製品ができたとき、お客様や市場、社会に対してどのような貢献ができるのか?ということを日々考えながら会社作りを進めています。

私が入社した当時は売上の95%がたばこ乾燥機関連の仕事でしたが、企業競争力強化の観点から乾燥機市場の多角化を進めた結果、たばこ市場の売上比率は現在で約30%になりました。青森県のにんにくや、茨城県の干し芋、大分県の干し椎茸といった日本一の生産量を誇る新市場の開拓に成功してきたからです。このように、会社としての方針を作り実践できることが、経営層という立場ならではの面白いところです。

御社の今後の展望を教えてください。

当社の目標の1つが、「山口にいながら、世界で活躍することができる会社」になることです。乾燥の需要は全世界にあるので、当社の中核事業に成長させるべく海外の市場開拓を進めていきたいと思っています。

というのも、私自身が海外で事業を展開したいと20代の学生時代から思い続けてきたからです。こつこつと準備をしてきて、やっと最近軌道に乗り始めたので、更に海外事業を発展させていきたいです。就活中の学生さんにとって、地元の企業に就職して、なおかつ海外の仕事もしたい、という方が目指すような存在になりたいです。

今回インタビューをしたのは山口大学人文学部3年の道源さん(中央)と山口大学経済学部3年の津守さん(右)